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    <title>そして書評もミステリになった</title>  
    <link>http://ameblo.jp/mystery-books/</link>  
    <description>灰色に綴られた、ミステリ小説の奇妙な書評</description>  
    <language>ja</language>  
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      <title>津原泰水 「赤い竪琴」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488469027/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="赤い竪琴 (創元推理文庫)" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51988w8Q18L._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="115" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f6197693%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f13285641%2f" target="_blank">赤い竪琴</a><br />津原 泰水　東京創元社　&yen;672　(文庫： 2009/09/30)<br /><br />日常に倦み、無気力に生きるグラフィックデザイナーの入栄暁子は、祖母の遺品から出てきた夭折の詩人の日記を、その孫・古楽器職人の寒川耿介に返すため、尋ねていく。無愛想な寒川は、押し問答の末に日記を受け取るが、お礼にと自作の赤い竪琴を暁子に渡す。この不思議な出会いは、沈潜していた暁子の心を強く揺り動かした。　受け継がれる“絆”と“謎”の行方を描く、静謐な恋愛譚。<br clear="all"></blockquote><br />夭折の詩人・寒川玄児の手記が祖母の遺品として残された入栄暁子は、親族のもとへ忘却されていた形見を手渡そうと、少ない手掛かりから玄児の血縁――古楽器職人の寒川耿介に辿り着き、尋ねていく。<br />だが、彼の周囲の人たちは警告にも類する助言や、注意を喚起する忠告を促し、彼女を無闇にも警戒させる。その言葉通り、彼女が対面した寒川玄児の孫・耿介の寡黙な態度は、実際に冷淡に映るほど、心ない応対であるようにも受け取れた。<br /><br />そんな決して円滑ではなかったふたりの出逢いは、彼から返礼として贈られた赤い竪琴(THE FLAMED LYRE)が互いの運命を結び付けるかのように、徐々に変化の兆しを見せ始める。<br />グラフィックデザインの仕事を糧として孤独に生き、虚無の日々に倦んでいた彼女は、いつしか彼に淡い恋心を寄せていく。独特な雰囲気で人を寄せ付けない、無口で無愛想な若き職人の姿は、楽器を扱う自身の仕事に対する揺ぎない自信を凛々しくも漲らせていた。そして、何よりも彼が造る楽器には、感受性豊かな家柄の気質が滲み出るように、天性の所作が純良に宿されているとも感じられた。<br /><br />寂然とした控えめなふたりの振る舞いは、やがて暁子の想いに呼応し、静やかに相手を慕う恋心として共に意識されていく。その静謐な想いが心に秘められた純愛ともいうべき恋情は、敬意を孕んだ双方を思い遣る清らかな恋愛として、次第にふたりの関係性の中に芽生え、育まれていく。<br />それが大人の男女が選択する、淡い恋愛の形だった……。<br /><br /><br />互いに流れる血が現代に喚び起こした、過去に遡る恋路を辿るかのように繋ぐ、奇跡的な恋愛小説「赤い竪琴」。<br />大人の慎み深い恋愛模様が4つの章で綴られる物語は、恋の当惑と憂愁に揺れる心中の移ろいが、詩情のような繊細でいて壮美な筆致により紡がれている。その印象は、赤い竪琴の清らかな音律で奏でられた哀歌にも似た哀切な祈りであり、また、詩人が託した情熱的な思念が文章の綾として丹精に込められている詩片として眩く想起させられる。<br /><br />赤い竪琴の音(ね)と耽美な詞(ことのは)に導かれたふたりの出逢いは、隔世の血の絆に歓迎され、海(わたつみ)をも臨む焦がれる想いとして互いの胸中を温和に包み込んだ。瞑目していた赤い糸が、赤い竪琴の響きに誘われ、まるで過去の恩恵を準えさせるかのような奇遇としてふたりを結び付けた。<br />この静謐な恋愛小説は、吟遊詩人オルフェウスが奏でる竪琴の音が聴く者の誰をも恍惚と魅了したように、読む者を幻惑と黄昏の彼方へと浸らせるに違いない。著者から永久少女たちへと捧げられた、時の波間を揺蕩うような哀愁漂う大人の恋の物語は、恋愛小説という価値観を払拭させる瞠目の一冊として、心に秘められた繊細な琴線を揺り動かし、記憶の奥底に深く刻み込まれることだろう。<br /><br /><br /><em>『ならば詩人の成すべき仕事とは、発語の技術を磨いた挙げ句、一切を忘れ野蛮に帰す事ではありますまいか。私ときたら未だ最初の一言を探して彷徨ふ段階に居ます、私には時間が必要です』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10420559948.html</link>  
      <pubDate>Sun, 27 Dec 2009 13:27:55 +0900</pubDate> 
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    <item> 
      <title>上田早夕里 「火星ダーク･バラード」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4758433720/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="火星ダーク・バラード" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41%2Bijjy%2BfVL._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="110" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f5875937%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f13060364%2f" target="_blank">火星ダーク・バラード</a><br />上田 早夕里　角川春樹事務所　&yen;1,029　(文庫： 2008/10)<br /><br />火星治安管理局の水島は、バディの神月璃奈と共に凶悪犯ジョエル・タニを列車で護送中に奇妙な現象に巻き込まれ、意識を失った。その間にジョエルは逃亡し、璃奈は射殺されていた。捜査当局にバディ殺害の疑いをかけられた水島は、個人捜査を開始する。その矢先、アデリーンという名の少女と出会う……。未来に生きる人間の愛と苦悩と切なさを描き切った、サスペンスフルな傑作長篇。　第4回小松左京賞受賞作、大幅改稿で文庫化。<br clear="all"></blockquote><br />信じられないかもしれませんが、アデリーンという少女は人の感情を読み取ります。<br />”超共感性”と呼ばれるその受容能力は、周囲の強いエネルギィ(感情)を自身に取り込み(共感)、蓄積されたエネルギィを転換させるように外部に爆発的に放出させる特殊な力です。<br />彼女は人でありながらも、まるで外燃機関と内燃機関を循環的に両立させる、破壊の女神ともいうべきエネルギィ保存則に介入する、驚異的な能力を有す超越的な存在です。<br /><br />アデリーンは遺伝子操作によって創造された、新種の人類”プログレッシヴ”と呼ばれています。<br />彼女は波長が合う他者と特に感応しやすく、周囲の激しい情動を波動エネルギィとして敏感に感受します。しかし、その異能は自在に操れる段階には至っておらず、現在も未だ進化の途上です。残念ながら、時に衝動的な感情に対し、無闇にも共感してしまう危険性を孕んでいるのが実情です。<br /><br />プログレッシヴの能力は人類が進化した未来を体現したともいえる、未知の可能性が秘められた神秘であるのかもしれません。傲慢で浅ましい人という存在は、罪深い行動を繰り返すだけの弱い生物に過ぎません。その不条理を科学の力により払拭しようと試みる意識の革命こそが、プログレッシヴ計画の全貌だといえるでしょう。<br />しかし、そこには人が人を創造する倫理的な問題など、憂慮すべき数々の懸案が依然として残されています。<br /><br />何より……彼女はその能力を忌避しています。<br />時に自身の力でさえも制御不能となる強大な力は、苦痛を伴う恐怖の感情を彼女に植え付けています。当然ながら、彼女も人間です。人としての苦悩と葛藤に憤り、悲痛にも無気力に傷心しています。<br />超越的な力を有す彼女の存在は不幸であるのか、現段階では定かではありません。当然ながら、将来的にも研究は推進され継続されていくことでしょう。ですが、それが彼女たち、プログレッシヴにとって幸福であるのかは誰にも分からないのです……。<br /><br /><br /><em>『強さと弱さは矛盾しないで、ひとりの人間の中にある――。そのふたつがお互いに働きかけるから、人間の可能性は無限に開かれるのではないか』</em><br /><br />小松左京賞を受賞した「火星ダークバラード」は近未来の火星を舞台としたSF小説だが、その仮構の世界には多様な要素が大胆に内包され、本書は著者渾身の意欲作だといえる。<br />物語の主となる展開は、水島という捜査官が犯人を護送中に異常事態に巻き込まれ、意識を失っている間にバディ(相棒)を死亡させてしまう……その不可知な状況を懸命に究明しようと試みる男の苦難が前面に表現される。<br />水島は嫌疑をかけられながらも不屈に自らの正義を信じ、身の潔白を立証すべく果敢に独自調査を敢行し続ける。その信念を曲げない愚直さが、困難さえも恐れず権力に抗する強靭な意思として情熱的に映り、また、不遇な状況を打破しようと尽力する懸命な姿勢が、読者の心理を揺さぶるように感傷的に響いてくる。<br /><br />水島の信念を貫く行動は、SF小説でありながらもハードボイルドという形式がより相応しいと強く実感させられる。だが、物語はもう一つの側面として、超能力という人類の進化形態を空想させる科学的な題材が密接に絡んでくる。<br />新種の人類として創造された”プログレッシヴ”のアデリーンは、異能を有す自身の存在を否定するように、不信と不安の念に苛まれてきた。人としてではなく研究の対象として能力が利用される環境に疑問を抱く彼女は、直情的な行動を優先する水島と出逢うことで、改めて人という存在の有り様を意識的に思案する。<br /><br />アデリーンは、水島が巻き添えを受けた事件の核心に迫る存在だった。真実を希求する彼女は、共に縛られた境遇でありながらも、対照的に勇敢な行動を示す水島に刺激を受ける。彼女は人の採り得る可能性を彼の姿に見出し、沈鬱な心を拭い払うように積極的に事件に干渉することを決意していく。<br />やがて、アデリーンは水島の裏表のない実直な人柄に惹かれ、水島は彼女の強大な能力に恐れを抱きつつも、少女が宿す感傷的な心情に徐々に共感していく。そして、二人は感応する互いの存在が、自身の苦悩を柔らげる緩衝として必要な存在なのだと理解し合う……。<br /><br /><br />男女の恋愛模様を織り交ぜながら、物語は先端科学における飽くなき理想の探求と人間的な元来の脆く揺れる情動が、地球を模した(テラフォーミング)近未来の火星上で、物憂げに叙情的に主張される。<br />不可解な謎に潜む権力との孤独な闘争に恋愛という感情が加えられる物語性は、従来から広く踏襲される類型的な構図ともいえる。しかし、本書は火星を舞台にした近未来SF小説であり、過激なハリウッド風アクションで興奮と疾走感を与える物語であり、更に揺るがぬ自身の判断や信念を貫き通すハードボイルドや、サスペンスによるドラマ性を演出すると共に、既存の人類を超越する超能力者の苦悩を表現するサイキック・ファンタジィ、そして男女の淡い恋心を表現する恋愛小説とも広義に受け取れる、分類不可能な要素が多分に凝縮されたエンターテインメント性溢れる小説となっている。<br /><br />先端科学が到達した、火星という非なる地球が空想される世界では、新たなる挑戦に必然的に潜む苦悩であり、人の進化が及ぼす、未だ仄暗い光が照らされた段階に過ぎない未開の昏冥たる状況が提示される。<br />だが、やがて宇宙に適応していく人類の未来、その進化途上のアデリーンという少女と、地球の重力に縛られた、感情が率先し行動する水島という男性の存在――ふたりは確かに異なる部分も多いのだが、互いに人である以上、本質において深い共感を感応するほどに彼らは意識を共有することができた。それが著者が示す、未来の人類の姿が映し出された物語としての提言であり、弛まぬ科学の進化に託された希望の描写であるのかもしれない。<br /><br />その、物語の最後でふたりが辿る運命の結末は……。<br />本書の更に興味深い点は、文庫版は単行本から大幅に改稿されており、結末が全く異なる様相として表現されていることにある。要は、ゲームなどで頻繁に見られるマルチエンディングの形式を採用しており、著者はもう一つの解釈として考えられる結末を文庫／単行本で読者に提示している。<br />実際に単行本の終章も読んでみたが、本意ではミステリ的な側面が弱いと実感した文庫版よりも単行本版の方が妥当な結末かと思われた。つまり、単行本版の解釈がやはり本来の解として用意され、文庫版はよりふたりの関係性を重視する傾向が強い解であるように捉えられた。<br /><br />また、何より本書の非凡な点は、21世紀に夢見ていた近未来の世界観が、秀逸に火星に形成されているSF的背景の確立にある。<br />現在でも想定可能な技術が実用段階として活用されている空想社会は、科学が正当かつ着実な歩みで発展した近未来として、違和感なく構築されていると物語から実感できる。その科学的な背景が整った、火星という近未来における舞台で繰り広げられる、愛と友情と迫力のアクションとサスペンスと超能力が渾然一体と表現される仄暗い物語詩、それが「火星ダークバラード」というSF小説だろう。<br />アデリーンという少女に象徴される、人類の進化という未来の萌芽を人自らが創り出す冥闇ともいうべき行為の是非が、この物語では哀歌のように詠唱される。重力に縛られない新たなる人の意思が、いずれ人としての深遠な進化を齎すのか、それともやはり、人は人であり人であろうと永遠に懇願し続けるのだろうか……未来への夢想は陶然と尽きない。<br /><br /><p align="center"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4758410216/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="火星ダーク・バラード" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51JZ2TPN0PL._SL160_.jpg" border="0" width="110" /></a><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4758433720/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="火星ダーク・バラード" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41%2Bijjy%2BfVL._SL160_.jpg" border="0" width="110" /></a></p><br /><br /><em>『人間は内面が脆くて弱いからこそ、強くあろうとして勇気を奮い起こすものなのかもしれない。醜く惨めな本質を持つからこそ、どこかに、本当に美しい真実があるかもしれないと夢想するのかも……』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10412797948.html</link>  
      <pubDate>Wed, 16 Dec 2009 22:57:32 +0900</pubDate> 
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    <item> 
      <title>海堂尊 「夢見る黄金地球儀」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488498019/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="夢見る黄金地球儀" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/518qm5HQb0L._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="112" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f6222473%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f13307875%2f" target="_blank">夢見る黄金地球儀</a><br />海堂 尊　東京創元社　&yen;672　(文庫： 2009/10/30)<br /><br />1988年、桜宮市に舞い込んだ「ふるさと創生一億円」は、迷走の末『黄金地球儀』となった。四半世紀の後、投げやりに水族館に転がされたその地球儀を強奪せんとする不届き者が現れわる。物理学者の夢をあきらめ家業の町工場を手伝う俺と、8年ぶりに現われた悪友・ガラスのジョー。二転三転する計画の行方は？　新世紀ベストセラー作家による、爽快なジェットコースター・ノベル。<br clear="all"></blockquote><br />桜宮市が水族館に設置した「黄金地球儀」を、町工場を営む平沼家がなんだかんだで守衛する事態となり、平沼平介は苦渋の決断でその契約に応じざるを得なかった。だが、人騒がせな悪友・久光穣治(ガラスのジョー)の「ジハード・ダイハード」という合言葉により、てんやわんやと逆に「黄金地球儀」強奪計画を実行する羽目になる……。そんなどたばたした経緯に右往左往する展開が、軽快なコメディとして本書では描かれている。<br /><br />海堂作品といえば桜宮サーガと呼ばれる一連の作品群(「<a href="http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10095491461.html" target="_saga">チーム･バチスタの栄光</a>」→「<a href="http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10151962672.html" target="_saga">ナイチンゲールの沈黙</a>」「<a href="http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10210749576.html" target="_saga">ジェネラル･ルージュの凱旋</a>」→「<a href="http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10202541529.html" target="_saga">螺鈿迷宮</a>」→「イノセント･ゲリラの祝祭」……)が有名だが、本書はその医療ミステリの系譜から外れる、桜宮市という舞台背景を活用したエンターテインメント・クライムノベルとなる。<br /><br />金品などを強奪するコンゲーム(詐欺)では警察と犯罪者が相争うのが通例かもしれないが、海堂作品においては常のように権力側との騒動が批判的に表現される。物語はコメディ路線でありながらも、理不尽かつ詐欺紛いに既得権益を牛耳る側への辛辣な主張が往々に紛れ、強奪作戦実行を促す強い原動力となっている。<br /><br />しかし、奇想天外な装置を製作する技術力だけはある町工場を営む平沼家が、桜宮市役人や人騒がせでお気楽なガラスのジョーに振り回される展開は、ただ空騒ぎを繰り返しているだけに過ぎず、特に見所もない喜劇のままで終始してしまう。<br />本作はあくまで著者が手掛ける作品のジャンルを広げる役割を担う、凡庸な娯楽小説でしかない。過去作の主要人物が登場する点が、桜宮サーガとしての繋がりを匂わせ(以後の活躍が垣間見れる)、読者の関心を満たす程度の作品ともいえる。<br /><br />次々と災難に翻弄される本作は、田口・白鳥シリーズのような洗練されたユーモアというよりも、稚拙さを感じさせる三流コメディとして残念ながら映ってしまう。そのエンターテイメント性に満足出来るなら良いが、本作は著者が息抜きで執筆した作品であり(「死因不明社会」同時執筆)、メインとなる医療ミステリとは一線を画す作風だということを事前に意識しておく必要が少なからずある。<br />平易な軽快さを特に求めない読者であれば、医療問題に対する主張も無い本作は、特に手に取る必要性は感じられないだろう。そんな苦言をはっきり断言してしまうとは……本書に期待する読者に向けて、苦渋の決断でこう告げておく。「ジハード・ダイハード(聖戦に死ね)」<br /><br /><br /><em>『お前はまだ自分の中の黄金郷に留まって、夢見る眠りに浸っている』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10411280161.html</link>  
      <pubDate>Mon, 14 Dec 2009 22:18:09 +0900</pubDate> 
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    <item> 
      <title>伊坂幸太郎 「フィッシュストーリー」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101250243/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="フィッシュストーリー" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/510sd7P8evL._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="111" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f6244670%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f13437422%2f" target="_blank">フィッシュストーリー</a><br />伊坂 幸太郎　新潮社　&yen;540　(文庫： 2009/11/28)<br /><br />最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など爽快感溢れる作品集。<br clear="all"></blockquote><br />　　読書中<br />「あれ？　魚の話じゃなかったのかよ」<br />寝転がって小説を読んでいた彼の独白が、私の耳に偶然届いてきた。「ひょっとして、タイトル名から単純な想像を膨らませてたの？」短絡的な彼の思考をからかう様に、私はその言葉に咄嗟に反応した。<br />「え？　うん、そうだなぁ。たとえば、水族館で犯人からメールが送られてきて殺人事件が起こったり、意外な内容なら探偵役の<a href="http://www.sakanakun.com/" target="_blank">さかなクン</a>がギョギョギョ！　って事件に巻き込まれてさ、この凶器の魚はですねぇ～♪　とか力説すんのかな、なんて読む前は想像してた」彼は真剣な顔でそう言った。<br />私は、なんていい加減な妄想なんだろうと、思わず苦笑した。<br />でも、誰でも本のタイトルしか知らなかったら、それくらいの妄想は少なからずしているに違いない。それに、読み終わった本の感想が人により異なるように、もっと大袈裟な話や眉唾物の話を身勝手に想像する読者なんて世の中には相当数いるはずだ。<br />「あのさ、その本読んだら、感想聞かせてよね」<br />「うん、分かった。でも何なら、書評にして読ませてあげようか？」なんて、彼は意味深な言葉を告げ、「あの野球漫画の名作より感動するかなぁ？」と呟きながら、再び本の世界に没頭していった。<br /><br />　　数ヶ月前<br />店員の視線が何かと厳しい書店で、雑誌の立ち読みをしていたときのことだった。<br />常に周囲の異変を窺う癖が身に付いているからだろうか、見知らぬ男たちが書店で交わす、愚痴ともとれる不毛な言葉の応酬に自然と意識が向けられた。<br />「お前、伊坂幸太郎って作家、結構有名だけど知ってるよな？　もうすぐ『フィッシュストーリー』って映画が公開されるんだけどさ、驚くことにその本は単行本しか刊行されてない段階で、もう映画化されるんだぜ」<br />「マジで？　それって、ちょー信じられねぇ悪行じゃん」<br />「だろ。俺らは地球に優しいエコな文庫派じゃん？　そんな顧客を差し置いて、資源の無駄遣いともいえる単行本を読むコアな読者様を主要な客として映画業界は見ているわけだ。何か俺ら、思いっきり舐められてるような気がしないか？」<br />「そりゃ、誰だって感じるだろ。ってか、おいおい、文庫落ちって基本3年っていう暗黙のルールがあるじゃねーかよ。映像落ちは業界ルール無視か？」<br />「そういえば、他のミステリでもTVドラマ化で同じようなことしてた気がするし、なんか納得がいかねぇ気分だよな。っつーか、だんだんムカツイてきた。なら、今度の映画はぜってー見にいってやらねぇぞ！　誰か釈明会見しろっつーんだ、コラ！」<br />「映画は『アヒルと鴨のコインロッカー』のチームだから期待は出来るんだろうけどさぁ、お前の唐突なキレ具合はちょっと怖ぇ～って。でも、ぎろっぽんでちゃんねぇとしーめーするような映画・TV業界人も異常に腹黒そうで怖ぇ～し、つーか、自由過ぎる読者無視のソッコーの映像化って、何かオレオレ詐欺的な不正にしか思えねぇな。それとも、ただ単に出版業界が舐められてるだけなのか？」<br />「あ？　小説なんかすぐ簡単に映像化できますよ、ってことか？　本っていう媒体は歴史だけはあるから、出版業界っていかにも古臭い体質っぽいしなぁ。どこかの国の政治みたいに、構造的な欠陥だらけなのかもしれないしな」<br />「それに、単行本刊行と同時に図書館に本が並ぶってのも異常だろ？　皆様、本を買わずにご自由にお読み下さいって、見事に自らの首を絞めてるパターンだぜ。ほんと、出版不況とか言われてる根本の意味が俺には理解できねぇよ」<br />そんな具合に、書店の伊坂幸太郎コーナの前で、派手な格好をした男たちが騒々しくも熱く議論していた。俺は好奇心に駆られ、彼らの会話につい口を挿んでしまっていた。<br />「いや、その不合理な行為自体が恐らくミステリなんだよ。何なら、お前らが変革してみたらどうだ？　古い常識に浸りきった人間は何も気付いていないのだろうし、たとえ弱い声でも合理があれば、いずれ正しさは認められるだろうからな」<br />すると、彼らは驚いた表情をこちらに向け、納得するように頷いてこう言った。<br />「あんた突然話しかけてきて、泥棒みたいな怪しさだけどさ、常識的で良い事言うじゃん。それが反骨のロック精神ってもんだよな。何か、俺らの嘆きが誰かに届いてくれた気分で、ちょー嬉しいよ」<br />そして、彼らはサンキューと言い、ギターを背負ってその場から立ち去っていった。<br /><br />　　読了後<br />「キレイな顔、してるだろ。嘘みたいだろ。死んでるんだぜ、それで」<br />何かと影響されやすい彼は、奮発した豪勢な魚の活造りにそんな弔いの言葉を掛け、時おりご愁傷さまですと祈るような仕草をしながら、箸で刺身を摘まんでいた。<br />「で、どうだった？　その本の内容は」と、私は彼に約束しておいた感想を訊ねてみた。<br />「うん、すっごく良かった。後半になるほど印象に残る、4編の中短篇集だね」<br />「ぜんぜん、魚の話じゃなかったよね」と、苦笑いしながら声を掛けると、彼も微笑みながら頷いた。<br />「確かにギョギョギョ！　って具合に予想は外れたし、伊坂さんが得意とする連作短篇の形式ではなかったけどさ、でも、各篇が孤立していながらも、やっぱり伊坂作品だよなって思える雰囲気が強い小説だったかな」<br />「過去作と緩やかに繋がっているところとか？」<br />「うん。あとは、ほのぼのとした笑いとか、ミステリ的な捻りを効かせた技巧とかさ、長篇でなくても見所は満載だよね」<br />私は短篇の手軽さが好みなので、その感想には共感した。それから、ちょっと小耳にした情報を彼に教えてあげた。<br />「あのさ、はじめの『動物園のエンジン』は『オーデュボンの祈り』後の初短篇らしいよ。あと、この本に収録された各篇が執筆された期間は相当長くて、この小説は過去と現在の伊坂作品を繋ぐ意味合いも考えられるみたい」<br />「へー、そうなんだ。確かに、日常の謎や短篇ミステリ風だったり、技巧的な構成やハートウォーミングな物語って具合にこの短篇集は趣向が幅広く凝らされているから、まるで出世魚みたいな著者の成長の記録ともいえるのかもしれないね」<br />私は彼の言葉を聞いて、なるほどと得心するところがあった。この本は著者が作家として成長していった、その過程であり実力や実績が短篇の中で表現された成長譚とも呼べるのかもしれない。確かにそれぞれの短篇の世界が拡がるように、類似性が見られる長篇が執筆されているし、この短篇集は著者にとって、ある意味では記念碑的な作品になるのかもしれない、と素直に想像できた。<br />「でもさ、最近、あの言葉を聞かなくなっちゃったから、俺ちょっと悲しいんだよね」と、彼は唐突に不思議なことを口にした。<br />「え？　今、何て言ったの？」<br />「ちゃんと話聞いてた？　何か俺に隠した、イチモツでもあるの？　ま、俺はあるけどさ。あれだよ、あれ、”神様のレシピ”ってやつ。俺、あの言葉好きだったんだけど、最近は全然出てこないじゃん。たまにでもいいから、あの台詞が聞きたくなる時があるんだよね」と、彼は少しふざけながらも真面目な表情で、私に訴えかけるようにそう言った。<br />「うん、あの台詞はほんと良いよね、何だかあったかい気分になる。けどさ、その前の言葉は不要でしょ？　ちょっと物思いに耽っていただけだしさ、ほんと変に紛らわしいこと言うと、ぶっとばすよ？」<br /><br />　　現在<br />良い小説を読んだら、相応の文章を何か書こうと心掛けている。<br />この本は良い小説なんだけど、あまり認知されていないだろうなぁ？　恐らく著者の狙いはこうだろうけど、それが本当に読者に伝わっているんだろうか？　なんて思うことは頻繁にあることだ。<br />小説を理解するという行為は、思いの他、孤独といえるのかもしれない。それは魚が広大な海を泳いでいるような感覚に、意外と近い状態なのかもしれない。ただ、その孤独感は、著者に難点があるわけではなく、むしろ大抵は読者側の意識に問題があるのだろう。<br />良質な本が売れなかったり、真意が読者に届いていなかったりしたら、いずれ著者は挫折するんじゃないだろうか？　そんな杞憂を覚えてしまう時がある。だから、小説から読み取った感覚を、洩らさず長文で書き綴ってしまっているのかもしれない。荒波の大海に揉まれながら、群れを成して<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />でも、せっかくこんな文章にしてみても、その想いは誰かに届いているんだろうか？<br />売れている小説と良い小説というのは全く別物だろうし、どちらかと言えば、良い小説を自分で判断して読みたいと考えている。<br />伊坂作品は双方を兼ね備えた、売れていて、良質な小説なんだろう。その想いは、著作の人気からしても、充分に多くの人に届いているに違いない。いや、そんなことは他人に言われなくても、誰だって理解していることだとむしろ反論されそうだ。<br />嘘の話ではなく、読者の多くは「世界中の誰よりも伊坂作品を愛してます」と内心を打ち明けるのだろうし、それに何より凄いのは、「伊坂作品だから、いつもこんな文章でいられるのです」という軽妙な物語性に尽きることだろう。<br /><br /><br /><em>『僕の孤独が魚だとしたら、そのあまりの巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出すに違いない』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10407499408.html</link>  
      <pubDate>Wed, 09 Dec 2009 23:30:40 +0900</pubDate> 
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      <title>薬丸岳 「闇の底」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062764571/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="闇の底" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41nTO7AS1CL._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="115" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f6182573%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f13273842%2f" target="_blank">闇の底</a><br />薬丸 岳　講談社　&yen;630　(文庫： 2009/09/15)<br /><br />子どもへの性犯罪が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が殺される。卑劣な犯行を殺人で抑止しようとする処刑人・サンソン。犯人を追う埼玉県警の刑事・長瀬。そして、過去のある事件が二人を結びつけ、前代未聞の劇場型犯罪は新たなる局面を迎える。　『天使のナイフ』著者が描く、欲望の闇の果て。<br clear="all"></blockquote><br />美しい妻と可愛い娘に恵まれ、理想的な家庭を築いた男がいた。<br />だが、男は幸福に満たされた現在の平穏な境遇と比較し、卑劣な犯罪が一向に無くならない社会に対し、胸中に強い憤りと危惧を抱いていた。娘が幼児性愛(ペドフィリア)の性向を持つ小児性犯罪者(チャイルド・マレスタ)に脅かされる危険性を憂慮するだけで、男は恐怖するように醜い彼らの存在を激しく嫌悪した。<br />そして、男は幼気な少女に向けられた被害が報道されると、社会の秩序を著しく穢す汚濁を正義で払拭することを目的とするように、小児性犯罪の前歴者を狙った挑発的な劇場型犯罪を繰り返していく。自らを処刑人・サンソンと名乗り、小児性犯罪に対する抑止的な報復行為として、次々と反社会的な私刑を公然と執行した……。<br /><br />刑事の長瀬は、過去に受けた重苦しいほど悲痛な傷跡を背負っていた。<br />後悔の念が拭い切れないその苦い記憶は、彼が刑事となる動機として、社会の卑劣な犯行を糺す正義の理念として純粋に培われてきた決意ともいえた。彼は欲望を満たすだけに犯される悪を誰よりも憎み、被害者の心の痛みを共に理解し、健全な社会を構築するために可能な限りの仕事を刑事として懸命に貫いてきたつもりだった。<br />だが、現実の社会は、彼の理想とは大きくかけ離れていた。日々至るところで淫らな悪意が犯行を招き、身を守る術を持たない少女は性犯罪の標的となり、警察の捜査など無意味だと揶揄されるように卑劣な犯罪が無くなることは決してなかった。<br />その現実の矛盾に葛藤するように刑事として強い疑問と煩悶を抱く長瀬は、サンソンの行為を司法の側から忌避しながらも、心の奥底では犯罪者の理念を頑なに否定できない、相反する感情が存在することを吐露してしまう……。<br /><br /><blockquote>　出所情報<br />13歳未満の子供に対する性犯罪前歴者の出所情報(居住予定地など)を、法務省が警察庁に提供する制度(2005年制定)。</blockquote><br />江戸川乱歩賞受賞作「天使のナイフ」でも描かれた、本来は社会で深く論じられるべき犯罪の是非であり関連する法律の齟齬を問う著者の作風は、本作においても痛切に心に響いてくる。<br />前作「天使のナイフ」では”少年法”という法律の根底に孕む諸問題を深く抉ったが、本書「闇の底」では”小児性犯罪”が社会に及ぼす影響を提起すると共に、ミステリ小説としての洗練された技巧が秀逸に表現されている。<br /><br />米国(ミーガン法)に倣い2005年に施行された小児性犯罪者の出所情報は、地域社会の安全性を配慮する警察庁の施策ではあるが、刑期を終えた前科者にとっては監視の目が著しい差別を招く可能性が生じる、生活と人権を不必要に縛り兼ねない更正の妨げとなる危険性も持ち併せてしまっている。<br />しかし、小児性犯罪者の犯行は再犯率が高いという指摘もあり、世間の目は当然のように厳しく、被害者・周辺住人の心情を考慮すれば、必要な措置だということに異議を唱える声は少ないだろうとは推察できる。だが、現在の社会(司法)における実情は、出所情報は警察に伝達されるのみで、一般的な情報の公開は行われていない……。<br /><br />著者は小児性犯罪という対応が困難な諸問題を慎重に諭すように、読者にミステリ小説という物語の中で提示する。それは過去に罪を犯した者が過ちを償い更正する人の心であり倫理を尊重すべきか、絶対的に弱い存在である小児を守ることを何よりも優先させるべきかという、論点の軽重を問う深刻な選択ともいえる。<br />だが、小児性犯罪の被害者となった当事者(遺族)にしてみれば、加害者の更正を憂慮するよりも、永遠に消えることの無い心の苦しみを救済して欲しいと懇願するのは当然だろう。その悲劇の闇に渦巻く葛藤が、本書では重苦しくも哀しく表現され、読者は物語と真摯に向き合わざるを得なくなる。<br /><br />著者は現実社会が抱える深いテーマ性を、常にミステリ小説の体裁に組み込んでいる。<br />前作は江戸川乱歩賞受賞という評価からも、幾重にも張り巡らされた謎であり技巧と物語性のバランスが非凡に配慮された作品だったが、本作は堅実なミステリとして、簡約に鋭く纏められている点が秀逸に映る。<br />本書は決して派手さを求めるのではなく、安定感と意外性を与えるミステリとして、謎は結末に向かい一点に集約していく。だが、その先には読者の心を蝕むように深い闇の底に誘う、慎重な思索を要する罪深い結末が用意されている。<br />長瀬が小児性犯罪者を強く憎みながらも、同時にサンソンによる私刑行為の裁きを苦悶したように、読者は絶対に捕えられない審判を各々の判断で下すしかないのだろう――。<br /><br /><br /><em>『自分がいるこの世界は自分が守るべき価値のあるものなのだろうか』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10403608987.html</link>  
      <pubDate>Fri, 04 Dec 2009 22:41:34 +0900</pubDate> 
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      <title>初野晴 「漆黒の王子」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4043943156/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="漆黒の王子" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51rGRrIVtGL._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="115" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f6191799%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f13280582%2f" target="_blank">漆黒の王子</a><br />初野 晴　角川書店　&yen;900　(文庫： 2009/09/25)<br /><br />ある地方都市のマンションで、男女の死体が発見された。遺体は暴力団藍原組組員とその情婦。だが、藍原組では以前から組員が連続不審死を遂げていた。しかも、「ガネーシャ」と名乗る人物から奇妙な脅迫メールが……。一方、街の下に眠る暗渠には、《王子》他6名のホームレスが社会と隔絶して暮らしていた。連続殺人は彼らの仕業なのか？　ふたつの世界で謎が交錯する超本格ミステリ。<br clear="all"></blockquote><br />　上側の世界――ワカケホンセイインコが大量に繁殖した街で繰り広げられる、暴力団の闇の抗争。<br />藍原組組長代行の紺野と、その片腕として陰で謀略を揮う車椅子の高遠。<br />彼らの醜悪な暴虐は、周囲に諍いの芽となる怨恨や反感を根深く残してきた。組上層部や他の組織との水面下での確執は絶えず、反目する緊張は極限状態にあった。<br />そんな折に藍原組を襲う、眠ったまま死に至る奇怪な連続不審死。そして、彼らに届く、”ガネーシャ”と名乗る正体不明の人物からの不可解な脅迫メール。<br /><blockquote><em>砂の城の哀れな王に告ぐ。<br />私の名はガネーシャ。王の側近と騎士達の命を握る者。<br />要求はひとつ。<br />彼ら全員の睡眠を私に差し出すこと。</em></blockquote><br />姿の見えないガネーシャの執拗な敵意が、卑劣に弱者を虐げる彼らに襲い掛かる。<br />紺野と高遠は判然としないガネーシャの動機と思惑に過敏に苛立ち、その当然の仇として、暴力の秩序に則る相応の報復が周囲に残忍にも積み重ねられていく。だが、事件の全貌を暴くことに心血を注ぎながらも、事態は彼らを嘲弄するかのごとく、一向に途絶えることなくその後も組員の死は続いていく。<br />藍原組は騒然と憤懣に駆られ、本能が渇望する睡眠の恐怖に苛まれ、理解不能な連続不審死に恐慌を来していく。やがて、紺野と高遠は漆黒の運命に導かれるように、非道な抗争へと巻き込まれていった……。<br /><br />　下側の世界――地下深く掘られた、排水用の暗渠に暮らす者たちの闇の終生。<br />人目から離れた暗闇に潜まざるを得ない、逃れられない生命の連鎖の最下層に位置する者たち――《王子》《時計師》《ブラシ職人》《楽器職人》《画家》《墓掘り》《坑夫》。そして、《ガネーシャ》と呼ばれる記憶を喪失した女性。<br />彼らは社会から疎外されるように地下に隔絶された、陽のあたる世界に受け入れられなかった末端の存在だった。彼らは光が遮られた失意の闇に魅せられた、不遇と悲嘆が曇天のように空を覆う数奇な星回りに翻弄される弱者だった。その幸福から見離された生涯は、いつ命脈が尽きるとも誰にも判断が付かなかった。<br />それでも、暗渠に暮らす者たちは西洋に存在した職業で互いを呼び合い、微かな誇りと尊厳を主張するように、暗黙の秩序を暗闇の中で保ち続けていた。漆黒の《王子》により齎されていたその支配は、生命の摂理を模した幻影に近い平安であるに過ぎないのかもしれなかったが、《ガネーシャ》は彼らの儚い生が矮小ながらも人としての社会を形成する秩序に組み込まれたのだと、次第に共感を覚えるように理解した。<br />誰もが少なからず被る悲しい現実を堪え忍ぶように暗渠に暮らす彼らの生き様は、やがて《ガネーシャ》の心の闇を埋め、過去の記憶を鮮明に喚び起こす。そして、彼女は星の輝かない漆黒の運命に身を委ねることを決意する……。<br /><br /><br />著者渾身の作ともいえる「漆黒の王子」は、傑作とも表現できる素晴らしい内容だった。<br />物語は序章において、悲運のふたりの少年が冷酷な悪意に染まる発端ともいうべき、心に刻み付けられた深い傷跡――その漆黒の闇を背負う悲劇的な生い立ちが告白されるように、寂寞とした追憶から語られる。<br />彼らの辿る流転の境遇は、まるで原初に決定付けられていたのかとさえ思われるほど、幼少期の辛い記憶を露に遡ることで克明に浮き彫りとなる。それは、未来を暗澹と啓示するかのごとく、負の連鎖から逃れられない不可避な悲運を象徴的に明示していた。<br /><br />序章以降は上側と下側に区分される、二つの無明な闇の世界が交互に意味深に展開される。<br />理不尽な暴虐が横行する上側の世界と、悲壮な暗闇に包まれた下側の世界。その虐げられた世界の対比が物語では酷薄に描写される。しかし、その類似性が本質において暗に主張された二層構造は、更に深い思索を読者に要求する本格ミステリとして秀逸に機能している。<br /><br />本書の要点は、様々な観点から述べられる。<br />上側の世界では、ガネーシャが画策する巧緻な犯罪の希少な手掛かりから、紺野と高遠(水樹)が事件の全貌を手探りに把握しようと試みる過程が、ミステリ小説として周到に構築されている。だが、本作は悪意と悪意の鬩ぎ合いともいうべき、悪辣な意思が物語から濃厚に漂わされている。その暴力と闇に支配された世界観(ノワール)は、良識的かつ演出的な探偵役の不在という光の欠如を意味している。<br />上記の設定ゆえに、本作の謎の解明は、名探偵によるミステリ小説としての秩序が予め喪失されている。よって、現実的に徐々に犯行の全容が垣間見えていく展開となるのは致し方なく、終盤におけるカタルシスが若干低く評価されざるを得ない可能性は否定できない。だが、その印象は本作に含まれる謎の多様性を充分に考慮する必要があると考える。<br /><br />本作の物語を覆う半面は、暗黒童話的な下側の世界により幻想性が色濃く演出されている。<br />ガネーシャの犯行は単なるミステリ的な側面に止まらず、読者に幾重もの価値観と思考の余地を促す、更なる深い余韻を物語に与えている。その寓意が込められた神秘性が心象に残される物語性は、上と下の世界と同様、加害と被害の相関、支配と従属の関係、過去と現在の因果など、深意が覗く二面性として複雑な様相が内包されている。<br />また、著者は層構造を意図的に活用し、混迷の謎を縦横に仕掛けている。従来のWho(犯人)、How(犯行)、Why(動機)という主要な犯行要素に加え、Where(場所)、When(時)、What(凶器)など、あらゆる謎の要因を挑戦的に網羅するように、物語に精緻に組み込んでいる。<br />つまり、本書は著者が物語に欲する童話としての輪郭が、ミステリ小説として相まって作用し合うように見事に体現されている。その事実に留意するように解釈の意識を持つべきだろうし、また、著者の意欲的な姿勢と手腕を高く評価したい。<br /><br />生の連鎖が奥深い示唆として組み込まれた物語の深遠な構図であり、技巧的な謎の提起・構築を充たす本作は、誇大に超本格ミステリと表現されても何ら問題はないと確信するように納得できる。<br />物語に込められた著者の真意を汲むように読み解く読者ならば、漆黒の曇天に遮られた光が雲間から射し込むように、この闇の物語が描く生命の連鎖という秩序に恍惚と呑み込まれることになるに違いないと、す、すす、推測する。<br /><br /><p align="right">→<strike>漆黒の闇と光のメール</strike></p><br /><br /><em>『しかし彼らは失ったものを数えることはせず、残ったものを懸命に数えて生きているような気がした』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10399912700.html</link>  
      <pubDate>Sun, 29 Nov 2009 23:39:02 +0900</pubDate> 
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    <item> 
      <title>小池真理子 「墓地を見おろす家」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041494117/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="墓地を見おろす家" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51QQfDItMSL._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="111" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f630731%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f10447478%2f" target="_blank">墓地を見おろす家</a><br />小池 真理子　角川書店　&yen;580　(文庫： 1993/12)<br /><br />新築・格安、都心に位置するという抜群の条件の瀟洒なマンションに移り住んだ哲平一家。問題は何一つないはずだった。ただ一つ、そこが広大な墓地に囲まれていたことを除けば――。やがて、次々と不吉な出来事に襲われ始めた一家がついに迎えた、最悪の事態とは……。　復刊が長く待ち望まれた、衝撃と戦慄の名作モダン・ホラー。<br clear="all"></blockquote><br />小さな子どもを持つ夫婦が、新居としてマンション購入を決意した。<br />都心への通勤も便利な、閑静な土地にある破格ともいうべき新築マンション。それは普通の家族が手に入れた、温かな幸福が訪れた瞬間であるはずだった。<br />だが、唯一の難点は、階下を見おろした風景が寺と墓地に囲まれている立地条件だった。死者が埋葬された静寂な墓地に敏感にも臆すると、周囲の全景に萎縮するように嫌な心地が感じられ、日々陰鬱な気分にさせられる……。<br />そんな薄気味悪さを他の世帯も察知し、やがて、マンションの住人たちが次々と退去していく。そして、遂には――。<br />訳有りの夫婦が選択した訳有りの物件。それは自らが招いた悲劇とさえ、俯瞰できるのかもしれなかった……。<br /><br /><br />現在では恋愛小説を代表する作家として知られる、高名な著者の作品を期待を込めて読んだ。だが、話は単に一家の恐怖体験が漠然と示されるだけで、正直なところ残念な印象が強く感じられてしまった……。<br />この小説が執筆されたのは1988年刊・1993年文庫初版ということで、著者が初期の作風から恋愛小説へと移行する時期・時代的要因が本作には多分に反映されていたのだと思われる。ホラー小説として考慮しても、その一昔前の時代性は確かに強く感じられ、当時は得体の知れない恐怖が迫り来る海外作品に先駆された描写が、モダン・ホラーとして充分に通用していたのかもしれない。<br />しかし、現在の視点で見ると、本書の物語は平凡に映ってしまう。あくまで現代風の恐怖として古典的な怪談が焼き直して表現されたような印象を抱く展開であり、すべての素材が半端な状態で置かれたまま物語は収束してしまう。<br /><br />恐怖や謎に対する含みを持たせた疑惑は有機的に怪異に連動するのではなく、霊が実体を伴わないように曖昧な状態のまま不穏に繋がらず、不可解な現象もただ恐怖を増幅させるためだけに演出されているに過ぎない。そこには説明の有無や解釈を考慮する余地は与えられず、不気味に放置されている印象しか読者には残らない。<br />ただ理解不能な恐怖という、正体不明の悍ましさが次々と一家に襲い掛かる。その恐怖は過去に流行したホラー形式だったのかもしれないが、現在では軽易とさえ感じられるほどに物語としての魅力が感じられない。<br />つまり、本書の関心はジワジワと心に染み渡る理不尽な恐怖のみに集約される。その恐怖に苛まれる夫婦と共に感情移入できるか否か――それだけの小説であり内容ともいえてしまう。ゆえに、仮に凝縮された短篇ならばまだ許容できただろうが、長篇ホラーとしては単に冗長なだけに感じられた、というのが残念ながら本音といえる。<br /><br />著者の意図としては、現世の住人が墓地を見おろすマンションに住み、死者の住人がマンションを見あげる墓地に棲む、その永劫の不可避な対比が輪廻する循環として表現されていたと推察する。また、夫婦の関係性や都市の形成なども、テーマとして主張されていたことは充分に認められるのかもしれない。<br />だが、暗に意図されたと思われる解釈を補足するように咀嚼することは可能だが、作品内での示唆の表現などから考慮しても、本作においては深みのある相応の見解が育まれるとは思えなかった。<br /><br /><br />人は誰しもが必ず死ぬ運命が定められており、その連鎖からは決して逃れられない。そして、生者は死の状態を認識することも適わず、ただ敬虔に霊に対し配慮するしか術はない……。<br />人は幾ら高度な文明を育んだとしても、不可知な霊現象を解明することは困難なのかもしれない。もしや、本書に対する否定的な見解も、霊と呼ばれる魂を理解できない不安感が育んだ病んだ心に過ぎないのだろうか？<br /><br />窓から景色を見おろすと、静謐な墓地が階下に窺える。<br />不信感ばかりが募る周囲の淀んだ気配から少しでも陰鬱な気分を紛らわせるために、もう少し著者の他作品を読んでみることにしようか……。やはり著名な「<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4101440166?ie=UTF8&tag=mysterybooks06-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4101440166" target="_blank">恋</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=mysterybooks06-22&l=as2&o=9&a=4101440166" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" />」を読むべきだろうか、いや、それよりもこのマンションから生きて……。<br /><br /><br /><em>『恐怖を誘うものは自分の病んだ心の中にこそある。現在への不満、弱まった生命力、歪んだ神経……』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10398329110.html</link>  
      <pubDate>Fri, 27 Nov 2009 23:10:46 +0900</pubDate> 
    </item>  
    <item> 
      <title>道尾秀介 「骸の爪」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344413601/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="骸の爪" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41%2BL%2BiIyJOL._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="107" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f6193113%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f13281292%2f" target="_blank">骸の爪</a><br />道尾 秀介　幻冬舎　&yen;760　(文庫： 2009/09)<br /><br />ホラー作家の道尾は、取材のために仏像の工房・瑞祥房を訪れる。その夜、彼は口を開けて笑う千手観音と闇の中で血を流す仏像を目にする。その翌日には、仏師の一人が姿を消していた。道尾は霊現象探求家の友人・真備とその助手・凛との3人で瑞祥房を再訪し、その謎を探る。工房の誰もが口を閉ざす、20年前の事件とは？<br clear="all"></blockquote><br />仏像を塑像・彫像する工房・瑞祥房に渦巻く因縁の闇。<br />道尾が取材で訪れた夜に、彼は奇怪な現象を目の当たりにする――真備と共に再訪した後も、工房の仏師が忽然と失踪し、謎は深まるばかりの事態となる。<br />仏に帰依する者たちは、工房の過去に潜む苦い記憶を曖昧な口調で覆うように濁し、みな関わるべきではないと口を強く噤(つぐ)む……。<br /><br /><br />「骸の爪」は、道尾氏が得意とする領域が凝縮されたような本格ミステリといえる。<br />導入の不可解なホラー的要素で謎を提起し、仏像関連の知識を絡めた伏線を多数散りばめ、曖昧な騙りで真実に対する渇望を与える。そして、人の愚かしい罪深さが育む悲劇の真相を、真備が理により詳らかに糾明する。<br />物語の大枠のプロットはデビュー作「背の眼」(真備シリーズ)と酷似している。だが、その内容は前作の不用意な乱雑さが軽減されており、より簡約に洗練された印象が窺える。<br /><br />仏像の工房・瑞祥房で起こる事件は、仏師が行方不明となるだけで実際に犯行が起きたのかさえ不定のまま、詳細な状況が見えずに不測に展開する。そこが、事件性を殊更に主張する通常のミステリとは趣向が異なり、不明瞭な霊現象にも通じる暈けた印象が終始物語から漂わされている。<br />だが、現実の裏では確かに何らかの異常事態が生じている気配が濃厚であり、その得体のしれない不気味さは、まるで暗闇の中を手探りで進むような先の見えない盲目で彷徨う状態であるかのように感じられる。<br /><br />本格志向の真備シリーズは、霊現象探究家である真備が探偵役となる。<br />彼は過去の人生経験から、理屈では測れない霊の存在を信じたいと強く希求し、探偵の仕事を生業としている。故に、このシリーズは未解明の心霊現象と根深い関連性があり、その類似性が強い土着の信仰ともいうべき民俗学的な要素が物語に多分に組み込まれる特徴がある。<br /><br />本作も確かに古い仕来りに代表される時代性や、環境に依存された特殊な影響というものが背景として潜み、人の妬み驕りという悪意や愚かさから生じる悲劇が事件の発端となっている。<br />しかし、全体の雰囲気として代替されているからなのか、シリーズ第2弾にして既に、物語の原初の心情ともいうべき真備の霊現象に対する探究の姿勢が本作では弱く感じられてしまう。それは血を流す仏像――不可解な霊現象――を解明する作業として少なからず推理・検証されるのだが、その提示に至る物語としての組み込み度合いが低く、シリーズの根幹を為す象徴が不徹底に偶像化されてしまっているようにも感じられた。<br /><br />前作「背の眼」は、主題となる霊現象の解明が行動の主眼として素直に探究されていた。それは、ホラー寄りの物語性が強く表現されたことを意味していた。対して、本作「骸の爪」は、密かに進展する事件性が強いと思しき失踪に絡む、過去の因縁を徐々に解明していくことが焦点となる。それは即ち、霊現象よりもミステリ寄りの物語性が意識的に表現されたことを示唆している。<br />両作共に道尾作品の特徴ともいえる、周囲に知られたくない醜聞を頼りとする探索が物語の中軸として用いられ、事件の背景には人の業ともいうべき悲壮で暗澹たる過去の禍根が待ち構えている。その因果に対する応報が人の心を抉る事件として生じ、苦難に虐げられ続けた堪え難い苦節が痛切に描写される。<br /><br /><br />犯人は罪深い悪意により、信念であり信仰が無常にも穢された。<br />長年に渡り土中に篭もるように伏せられてきた真実が露に照らされたとき、犯人は爪を掻き立てるほどの激しい恨みや憎しみが衝動的に湧き起こる。そして、足掻くことなく苛烈な悪意に盲目に染まり、闇に従わざるを得なくなる……。<br />憎悪に駆られ邪念の傀儡となった咎人は、精神性が歪められ分別を無くす。やがて、過ちとして凶行が闇に踊り、憤怒の情念が呪いとして示現するように……奇異な霊現象と見紛うばかりの事態が招かれていた――。<br />仏は笑い、血を流し、殺し、消え、生きていて、宿り、最後には……人を殺すか？<br />造形された阿修羅像の形相が慈悲から憤怒に豹変するように、その遣る瀬無い悲痛な想いの末の不義は、宿業による運命の悲劇ともいえた。<br />人心の移ろいは脆く善悪に揺れ、千手の救いから零れ漏れるように、仏は許されざる偽らざる心情に身を焦がされていた――。<br /><br /><br /><em>『でも、きっと人の心なんて、軽々しく論じることはできないんだろうね』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10393368862.html</link>  
      <pubDate>Sat, 21 Nov 2009 13:41:46 +0900</pubDate> 
    </item>  
    <item> 
      <title>粕谷知世 「ひなのころ」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122049733/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="ひなのころ" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51jA63BlidL._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="110" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f5455727%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f12809559%2f" target="_blank">ひなのころ</a><br />粕谷 知世　中央公論新社　&yen;680　(文庫： 2008/02)<br /><br />お雛様やお人形とも話せた幼い日々。病弱な弟を抱える家族の中で、ひとり孤独を感じていた頃、将来が見えず惑い苛立った思春期。少女・風美にめぐる季節を切り取り、誰もが心のなかに大事に持っている“あのころ”の物語を描き出す。　期待の新鋭、初の文庫化。<br clear="all"></blockquote><br />　「雛の夜…………風美　4歳の春」<br />4歳の風美(ふみ)は、いつも祖母と一緒にいる女の子だった。<br />父母は忙しい仕事や病弱の弟の世話のため、家にいることが極端に少なかった。だから、風美はひとりでいる時間が多く、その淋しさを遊びで紛らわしていた。<br />ジグソーパズルを完成させると、お姫様たちが彼女に微笑みかけてくれた。家の中の置き物たちは、身勝手な我が儘を彼女に語りかけてきた。見知らぬ三つ編みの若い女性が突然現れ、何気ない会話を交わしたりもした。<br />春は雛祭りの季節だった。<br />風美は気難しい祖母から迷信や怖い話をたくさん耳にし、幽霊が出ると聞かされてきた夜が大の苦手だった。風美は一人ではトイレにもいけないほど、気弱で臆病な女の子だった。<br />でも、雛祭りの夜は違った。<br />夜陰の恐怖を克服しようと健気にも決意したからなのか、とても不思議で幻想的な光景に遭遇した。それは決して忘れることができない、風美にとって大切な思い出であり秘密となった――。<br /><br />時は四季と共に、悠然と流れるように移ろう。風美という少女は、春夏秋冬の自然豊かな季節の変化を経て、少しずつ成長していく。<br />風美は4歳の少女の頃、いつも祖母のそばで遊んでいた。祖母は彼女を叱りながらも、常に身近で見守っていてくれた。<br />11歳の夜祭りでは、哀しい運命が待ち受けていた。田舎の学校では珍しい新しい友人がせっかく出来たのに、幼い少女には後悔という苦い記憶が刻まれた。<br />15歳の思春期の多感な時期、彼女は勉強や進路に思い悩み、親に対する反抗心が徐々に芽生えていった。しかし、その葛藤は自身に対する苛立ちが反意的に表面化しているだけに過ぎず、反省しなければならないことも多かった。<br />17歳の大晦日には、祖母が周囲を巻き込む騒動を起こしてしまった。でも、その不意な出来事は、改めて家族との繋がりを再確認する契機となった。<br /><br /><br />本書では誰の記憶にも残る、”あのころ”の思い出が清涼に切り取られている。<br />風美という情緒豊かな少女が過ごす、4歳の春・11歳の夏・15歳の秋・17歳の冬の長閑な田舎の風景。少女の現実と幻想が織り成す、春夏秋冬の季節と出来事が綴られた心温まる物語。その懐かしさを抱かせる幼い頃の情景が、著者の繊細な感性により優美に描かれている。<br /><br />この物語は、家族や友人・周囲の人たちと接する世界が徐々に拡がっていく風美の成長譚(連作短篇)でもあり、その成長する過程で彼女が煩悶と共に衝突する、揺れる心や淡い戸惑いも表現されている。しかし、風美は自身の感情と照らし合わせるように、他者の心情を次第に読み取れるようになっていく。それは少女がひなから巣立ちの時期を迎えた、確かな証でもあった。<br /><br />本書を読み、あのころの懐かしい情景に浸り、あのころの後悔を忘れずに、あのころの至らない自分を見つめ直し、あのころに感じていた粗野に映った肉親の愛情表現を理解する……それが風美の成長と共に心を通わせ、物語に感銘するということなのだろう。<br />ひなのように何も知らなかった、好奇心旺盛な幼い子どものころに体験した出来事は、幻想的に秘密めいていて、誰もが心の奥底に今も鮮明に記憶として偲ばせていると思われる。その懐かしい想い出をいつまでも忘れずに、感謝するように心の中にそっと宿しておきたい……でも、もしそんな大切な気持ちをどこかに置き忘れていたら、本書がいつでも”あのころ”のことをきっと思い出させてくれるに違いない。<br /><br /><br /><em>『だって本当のことだもん。おばあちゃんが教えてくれたんだもん』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10390836564.html</link>  
      <pubDate>Tue, 17 Nov 2009 23:42:57 +0900</pubDate> 
    </item>  
    <item> 
      <title>柳広司 「吾輩はシャーロック・ホームズである」</title>  
      <description> <![CDATA[ <blockquote><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4043829035/mysterybooks06-22/ref=nosim" title="吾輩はシャーロック・ホームズである" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51UtVkXKs-L._SL160_.jpg" border="0" align="left" width="108" /></a><br /><a href="http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/04568977.5469fec8.04568978.b002e482/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f6191788%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f13280572%2f" target="_blank">吾輩はシャーロック・ホームズである</a><br />柳 広司　角川書店　&yen;580　(文庫： 2009/09/25)<br /><br />イギリスに留学中の夏目漱石が心を病み、自分をシャーロック・ホームズだと思い込む。下宿先の女主人から相談を受けたワトスン博士は、ベーカー街221Bにてナツメをホームズとして遇することにする。ワトスンは漱石と共に事件の謎に取り組んでいくが、探偵としての素養のない彼は迷推理を披露する……。　ユーモアとペーソスが溢れたエンターテインメント小説。<br clear="all"></blockquote><br />「あなたは批判されたとでも感じたのでしょう。なるほど……いつも明るく前向きで、やさしい気持ちの持ち主ですか。環境問題には人一倍関心を持ち、子ども好きで世話好き、そして興奮するとウホッ！　ウホッ！　と胸を激しく叩くクセがある……。確かに、相手役の水川あさみさんは認めましょう。しかし、高感度UPを露骨に狙うあなたが抱いていたであろう本音という裏の側面は決して見逃せません。そもそもあなたの本来的な起用意図は、ミラバケッソのCMに感化されたのは明白でしょう。クラレが有名になり、その二番煎じの思惑を兼ねて選ばれたであろうことは、CM時期から考慮した推理により疑惑が持たれていたのです。更に、類似キャラとしてガレッジセールやスラムダンクの赤木剛憲が挙げられます。その先達の中に分け入るには相応の覚悟が必要とされ、あなたは密かに苦悩していたのでしょうね。そして何より、クラレの実物は愛くるしいのですが、あなたは想像以上の巨体さで周囲に恐怖感さえ抱かせます。その理想と現実のギャップに……。あなたの境遇を察しはしますが、しかし、犯人は明らかに高感度UPが未遂に終わり、逆上した……エネゴリ君です！」<br /><br />「相変らず、明晰な推理を聞かせて貰ったよ……ナツメ、いや、ホームズ」<br />「やぁ、久しぶりだねワトスン君。あの霊媒師の交霊会が行われた事件以来じゃないかい？　しかし、明晰だなんて茶化さないでくれないか。あの程度の推理なら、誰でも注意深い観察眼があれば容易に導き出せる結論に過ぎないからね。それよりも、私に何か用件でもあるのかい？」<br />「あぁ、君に会いに来るとすれば、やはり事件のことに決まっているじゃないか」<br />「また事件かい？　本当に事件ばかり起こる、物騒な世の中になってしまったものだね……」<br />「でも、だからこそ探偵と助手という、私たちのような存在の価値があるんじゃないか。それよりも、ホームズ。今回は少し特殊な事件といえるんだよ。まぁ、事件というのは少々大袈裟すぎるが、驚かないでくれよ？　何と先日の殺人事件がユーモア精神に溢れたミステリ小説として、日本で刊行されたらしいんだ！」<br />「な、なんてことだ、ワトスン君。それは素晴らしい事件じゃないか！　あれはまるでシャーロック・ホームズシリーズ最大の長篇『バスカヴィル家の犬』と文豪・夏目漱石の『倫敦塔』のパスティーシュのような事件だったからね。その難事件を見事に解明した私の推理が、小説として披露されているというわけか！　それこそ日本と英国が震撼する大事件ともいえる事態だよ。日本から留学中の研鑽の成果というものが、遂に我が国に広く示されるというわけか……」<br />「お、おい、ちょっと待ってくれないか、ホームズ。君は日本人なのか？　単に日本人に変装しているだけなんだろう？」<br />「あぁ、か、勘違いしないでくれ、ワトスン君。この背丈が小さく、鷲鼻でもない低い鼻で、顔色も黄色い滑稽な格好に変装するには苦労ばかりで本当に困っていたのさ。でも、これでやっと本来の姿に戻れそうだね」<br />「そういう意味か……しかし、ホームズのユーモア精神には度々驚かされるな。でも、君でさえも翻弄されたあの事件の顛末を、見事に小説として書き著してくれた著者は一体どんな人物なんだろうか？　柳広司という著者らしいんだが、もしや君は知っているのかい？」<br />「当然さ、ワトスン君。では、君に彼の説明をしてあげようか――著者の発想はユニークなんだ。素材が良ければ売れるという基本的な着想があり、広く認知されている対象を技術と工夫で良質に加工するのが身上といえる。そして、適正な品質を相応の対価として安定的に提供し続けるには、派手さよりも堅実なこだわりが徹底される必要がある。その姿勢は十戦すれば一勝九敗でも良しとする、過去の歴史から謙虚に学ぶ勤勉さが何よりも肝要だと主張されるのさ。更に、合理が貫かれた柔軟な発想と逆説的な道理が大胆に組み合わされたときに、論理の反転という世界観の新たなる視方が示され、画期的な製品と共にユニーク・クロージング・ウェアハウス(Unique Clothing Warehouse)は発展的に拡大して……」<br />「ちょ、ちょっと待ってくれ、ホームズ。疑っているわけではないんだが、もしや何か勘違いをしているんじゃないか？　柳広司氏ではなく、他の説明をしてしまっているような気がするんだが……」<br />「そんなはずは無いだ……あっ、しまった！　”柳広司”ではなく、”柳井正”と<a href="http://ameblo.jp/knights-hanawa/" target="_jyaruneta">ヤホー</a>で検索したときの情報を記憶してしまったようだ！　ワトスン君にこんな失態を見せてしまい……グスッ……本当に済まないと思っている」<br />「ナツメ……いや、バウアー、じゃなくて、ホームズ！　本当の情報を教えてくれ！」<br />「柳井氏はUNIQLOの社長であって、柳氏は歴史上の偉人を主人公に置くミステリ小説を得意とする作家なんだ。彼は巧みな風刺を常に作品に織り込もうとする。その傾向が今回は、かなりユーモアという方向性に意識が注がれているのかもしれない。でも、それは私がいま変装している、ロンドンに留学していた頃の夏目漱石という人物の状態を活用しようと試みたからこそ採られた、自虐的ともいうべき滑稽な措置なのだろうね」<br />「そうか、柳氏のことは何となく分かった。だが、ナツメ……いや、ホームズ。きみの推理は先ほどの誤りのように、稀に強引ともいうべき仮説的推論から結論を導き出す傾向があるから、充分に注意した方がいいのかもしれないね。そもそも現実的な推論では、前提として用いられる証拠と結果の因果関係は不定といえる。そう、まさに君が柳氏を柳井氏だと勘違いしたように、そんな些細な情報の齟齬が全く異なる結論を導き出してしまう事態を慎重に考慮しておくべきだろうね」<br />「あぁ、よく分かっているつもりだよ、ワトスン君。確かに状況証拠のみによる因果関係の正当性は慎重に対応しなければならない。だが、今のは単純な誤解をしていただけであって勘弁してくれないだろうか？　しかし、君もここぞとばかりに私の失態を猛烈に批判してくれるね。まるで、少々の誤字脱字、言葉使いの粗を探すことにばかりに熱心な読者みたいじゃないかい？　でもね、私を誰だと思っているのさ。かの有名な名探偵シャーロック・ホームズだよ？　先程の言葉をよく思い出してくれないだろうか、別に柳氏に対する説明として考慮しても、何ら不備は生じていないだろう？」<br />「ほ、本当だ……ホームズ、君の発言に誤りはほぼ認められないようだ！」<br />「だろうね。そこが素人探偵と名探偵との決定的な違いなのさ。仮にも名探偵と呼ばれるならば、<u>たとえ前提が誤っていたとしても、何らかの超越的な力が効果的に働き、神業のような推理としてむしろ現実の方が推理側に近付くのさ</u>。それが名探偵の推理による真実というものなんだ。つまり、名探偵とはいかなる事態においても真理に辿り付くことが可能な強運の持ち主”とってもラッキーマン”とでも呼べるのかもしれないね？」<br /><br />「ホームズ、いやナツメ……いい加減にしてくれよ。何を突然、そんな荒唐無稽なことを言い出すんだ？」<br />「いや、ワトスン君。君にようやく私の本当の姿を見せるときが来たようだね――ベリッ、ベリベリベリベリ」<br />「な、何をするんだ、ナツメ！　お、お前はいったい！？」<br />「ベリッ、ベリベリベリベリ……とってもラッキーマン参上！　しかし、そんな漫画が過去に実在したという事実はどれくらい認知されているかどうか、著者くらい謎であり知らないがね！」<br />「ホームズ……いや、ナツメ……いやいや、ラッキーマン。そうだったのか……ならば、私も本来の姿を見せるべきだろう――ベリッ、ベリベリベリベリ」<br />「ワ、ワトスン君！　き、君も？　いったい君は！？」<br />「やぁ、ラッキーマン。ワトスンとは仮の姿であり、私こそが本当のホームズなのさ！」<br />「何ぃ？　いや、そんなはずは無いはずだ。なぜなら……ベリッ、ベリベリベリベリ。私が本物のホームズだからだ！」<br />「くそぉ、やはりお前はホームズだったのか？　ベリッ、ベリベリベリベリ。私がコナン・ドイルだとは少しも疑わなかったのかね？」<br />「な、なんだと？　ベリッ、ベリベリベリベリ。私は実はホームズではなく、コナン君だ！」<br />…………。<br />ベリッ、ベリベリベリベリ……エドガー・アラン・ポー？　ベリッ、ベリベリベリベリ……金田一少年？　ベリッ、ベリベリベリベリ……江戸川乱歩？　ベリッ、ベリベリベリベリ……雨宮一彦？<br />…………。<br />ベリッ……<a href="http://www.hamadabritney.com/blog/" target="_jyaruneta">浜田ブリトニー</a>？　ベリッ……<a href="http://blog.watanabepro.co.jp/imotoayako/" target="_jyaruneta">イモトアヤコ</a>？　ベリッ……<a href="http://tubaki-oniyakko.laff.jp/" target="_jyaruneta">椿鬼奴</a>？　ベリッ……<a href="http://ameblo.jp/kanoaru/" target="_jyaruneta">狩野英孝</a>？<br />ベリッ……やはりネタの本家本元の<a href="http://jarujarujan.laff.jp/blog/weekly.html" target="_jyaruneta">ジャルジャル</a>？　ベリッ、ベリベリベリベリ……にゃ～。<br /><br /><br /><em>『完全にありえないことを取り除けば、残った可能性は、いかにありそうにないことでも、事実に相違ないということだ』</em>
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      <link>http://ameblo.jp/mystery-books/entry-10386288704.html</link>  
      <pubDate>Wed, 11 Nov 2009 23:18:19 +0900</pubDate> 
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